
アジャイル開発へのニーズが高まる中で、「アジャイルへの移行をどのように進めると良いか?」というお悩みをお持ちの方も多いかと思います。
そのような中で、NTTPCコミュニケーションズさまは積極的にアジャイル開発への取り組みを進められ、 弊社も継続的に支援させていただいております(Agile Japan 2019にて『受託開発でのアジャイル奮闘記 –ガントチャートからバーンダウンチャートへ』と題して合同事例発表を行いました )。
今回は、2019年にウォーターフォール開発からスタートし、現在ではアジャイル開発へと移行している「AtMOSプロジェクト」における取り組みについて、井街様にお聞きしました。
お聞きした方

井街 ちえこ さん
株式会社NTTPCコミュニケーションズ
テクノロジー&オペレーション開発本部
第二オペレーション開発部 ソフトウェア開発担当
2001年、NTTPCコミュニケーションズに入社。
課金・請求システムの開発を約3年経験後、サービスの企画部門へ移動し、新サービスの立上げ・既存サービスの改善業務を行っていた。
2012年に現担当へ移動し、社内のSOシステムの開発に従事。
主にウォーターフォール型でパートナー企業への委託を行うスタイルでの開発を行っている。
社内でアジャイル開発を推進するという動きがあるが、社内の開発リソースには限りがあるので、パートナー企業とどのように組めばアジャイル開発を円滑に進められるかという方法を模索中。
今回ご紹介する事例プロジェクトの発注元プロダクトオーナー。

藤田 みゆき さん
株式会社永和システムマネジメント ITサービス事業部
システムエンジニア
2003年、永和システムマネジメントに入社。
Agile開発は身近にあるものの、主に金融系業務システムのWaterFall開発に携わってきた。スクラムマスターの認定資格を取得したことをきっかけに、チーム開発のやり方を改善中。
今回ご紹介する事例プロジェクトの開発サブリーダーを務めた。
株式会社NTTPCコミュニケーションズについて
1985年に「すべてのパソコンのネットワーク化を実現する」という壮大なミッションを掲げて誕生し、SD-WAN、IoT/モバイル、セキュリティなど、時代ごとにお客様のニーズに沿った先進なサービスを提供しています。(https://www.nttpc.co.jp/)
Q:AtMOSの概要と、御社にとっての位置づけをお聞かせいただけないでしょうか?

井街さん
NTTPCコミュニケーションズのMaster’s One モバイル接続サービスの発注・SIMの開通・変更・解約を行うシステムです。当時は手動オペレーションが多いために発注からSIM開通までの時間がかかっていたのですが、全自動化することで納期を短縮し、他サービスとの差別化を図るのが狙いです。
Q:弊社に依頼した経緯、きっかけはなんですか?また、どのような期待感がありましたか?

井街さん
実は、今までとは違う軽量なスタイル・進め方で開発してみたいという思いがあり、アジャイル開発を得意とする永和システムマネジメントさんに声をかけみたのがきっかけです。ただ、実際に提案依頼してみると、ウォーターフォールを前提とした提案が出てきました(笑)。
Q:アジャイルを期待したのに弊社からはウォーターフォールの提案が出てきたとのことですが、率直にどのように思われましたか?

井街さん
案件の特性(スコープが決まっている業務システム)を見た上で開発手法を選定してもらえたという認識で、逆に安心感が持てましたね。
Q:Agile Japanでの発表を見ると、アジャイル化に向けた取り組みは、弊社側の開発チームの改善活動が発端のようですが、発注側である御社がアジャイル化を実感できたのは、どのような時ですか?

井街さん
一番わかりやすかったのは、進捗報告がガントチャートではなく、バーンダウンチャートで出てきた時でしょうか。
私どもは、順調に進んでいるかを知ることができれば良いので、手段は問いません。バーンダウンチャートは、直感的で分かりやすいので発注者としても使い勝手の良いツールだと思います。
また、当初からではなく、いくつかリリースを終えてお互いの信頼関係ができてきてから、というのも良いタイミングでした。最初から見慣れないフォーマットで見せられると、認識齟齬が発生することもあるかと思うので。
Q:開発を担当したAgile Studioの藤田みゆきさんにもお聞きします。開発チームのアジャイル化が、お客様にとってのメリットに繋がるようなこともあるのですね?

藤田さん
はい。弊社の開発メンバーが自己組織化されていくことで、メンバーひとりひとりのパフォーマンスが上がり、特定の人が不在の時もプロジェクトが停滞してしまうような不安がなくなりました。これは、間接的にお客様にとってのメリットに繋がると感じます。
また、お客様からは、テストケースや環境構築の自動化のことなど、運用面のことまで一緒に考えてもらえた、との声もいただきました。これも、顧客にフォーカスするアジャイルマインドが身に付いた結果だと思っています。
Q:次に、開発環境について藤田さんにお聞きします。全行程リモートでの開発でしたが、リモート開発をうまく回すために、何か工夫した点はありますか?

藤田さん
リモートでの定例会と、定期的な対面での打ち合わせを組み合わせました。定例会は週1回で枠を取り、企画、開発、運用、ユーザ各担当に参加いただいきました。互いに定期的に会社を訪問し、対面でのやりとりでのコミュニケーションで、信頼関係を深められたことも大きいです。

(写真:永和システムマネジメント福井本社での打合せの様子、2019年撮影)
Q:今だとミーティングは完全リモートになるかと思うのですが、現在のAtMOS開発で、何か問題は発生していませんか?

井街さん
はい、特に発生していません。当時から培っている信頼関係もありますし、各種リモートツールの導入や運用ノウハウも進化していますので、まったく問題ありません。Agile Studio さんには、AtMOS以外のリモートアジャイル案件も支援いただいていたのですが、そちらも順調に進めることができました。
Q:最後になります。AtMOSでの取り組みは、御社のビジネスや組織に対して、どのような効果があったでしょうか?例えば、 AtMOS以外での、御社のアジャイル開発への取り組みへの影響などあれば紹介してください。

井街さん
大きかったのは、AtMOSでの完全リモートの開発の成功によって、組織内で同様の環境下での開発(海外・他地方)にチャレンジしようという雰囲気が高まったことです。その結果、リモート開発に必要なツール整備が進み、内製以外でもアジャイル開発を実施し易い環境が整ったことで取り組みが広がりました。
Q:ありがとうございます。現在もAtMOS開発は継続中ですが、弊社に期待することあればお聞かせください。

井街さん
以前、AtMOSの開発案件が一旦途切れた際に、開発体制を再度立て直すのに時間を要してしまいました。今後はAtMOS以外のNTTPC内の様々な開発案件を同じ体制下で実施することで、システムや案件に閉じず、お互いがチームとして継続的に成長していくことや、更なるカイゼンの提案をどんどん頂けることを期待しています。
今回の事例にあります『リモートアジャイル開発』を詳しく知りたい方へ!
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