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  • 木下史彦

アジャイル組織変革の8段階

Agile Studio プロデューサーの木下です。


最近、エンタープライズレベル(組織全体)でアジャイル導入を推進していきたいというご相談を受けることが多くなってきました。

そうした中で「アジャイル組織変革のプロセス」というものが見えてきましたのでご紹介したいと思います。


部門や仕組みをつくればうまくいくという勘違い

アジャイル推進のための部署をつくったのはいいが適切な権限も予算も与えられずお任せ状態。集められたメンバーは本業との掛け持ちで、アジャイル推進の活動に充てられるのは週に数時間がいいところ。

こんなことではアジャイル推進はおぼつきません。


また、いきなりアジャイル社内標準なるものを作成し、今後は社内の全プロジェクトが標準にもとづいて開発することという号令を発するのも、アジャイルの本質からは全くかけ離れてしまいます。


では、どのような形で変革を進めていくのがよいのでしょうか?


ジョン・コッターは『企業変革力』の中で「変革の8段階プロセス」を提唱しています。これとは完全に一致しませんが、私たちが考えるアジャイル組織変革のプロセスを解説します。


Agile Studio が考えるアジャイル組織変革のプロセス



アジャイル組織変革の8段階

  1. トップがビジョンを示す

  2. ひとつのチームではじめ短期間で小さく目に見える成果を出す

  3. 複数チームに展開していく

  4. チェンジリーダーを発掘する

  5. 成果を外部に発信する

  6. 全社に展開していく

  7. 制度やルールづくりを行う

  8. マインド・文化を定着させる


それぞれの段階毎に解説していきます。


1. トップがビジョンを示す

アジャイル導入の狙い・目的やアジャイルに期待していることがばらばらではスタートから躓いてしまいます。

私がコーチとして最初に現場に行ったときによくやることは集まった人たちひとり一人に「自分たちの会社がアジャイル導入を進める目的」を書いてもらうということです。書いたものを一斉に出してもらうのですが、その瞬間何とも言えない空気になります。ことごとく各々が思い思いのことを考えていることが露わになります。


「時代の流れだから、当たり前でしょう」「今さら何を聞いているんだ」という反応をされることもあります。当たり前でも言葉にして伝えないと伝わりません。「DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するため」というのも答えにはなっていません。その理由を聞いています。


トップは伝えている気になっていても、現場には伝わっていないこともあります。何度も繰り返し伝えてていく必要があるでしょう。

正常性バイアスという言葉があります。心理学の用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過少評価したりしてしまうことです。直近の会社の業績がよかったり、事業がうまくいったりしていると変化に対する動機づけは小さくなります。伝わらなさの原因はこういったバイアスも関連しています。

危機意識からはじめる必要があります。組織にとって今何が脅威で、その脅威を機会に変えていくためには自分たちはどのように変わっていく必要があるのか。


2. ひとつのチームではじめ短期間で小さく目に見える成果を出す

次に、トップのビジョンに賛同するメンバーを集めて5人程度の小さなチームをつくります。このチームでパイロットプロジェクトに取り組むのです。

欲張って大きくはじめてはダメです。先を急ぎたい気持ちは分かります。変革には痛みが伴います。痛みを最小にしながら、組織とのフィット・アンド・ギャップを見極めていく必要があります。


パイロットプロジェクトに取り組んでいくと3〜6ヶ月という短期間で小さく目に見える成果が出てきます。アジャイル開発のプロセスをチームが自律的にまわせるようになり、MVPを何度かリリースすることができます。

そして、何よりもチームのメンバーが主体的になります。口数の少なかったメンバーが積極的にディスカッションに参加して発言するようになるという変化が目に見えます。私の経験上、これが組織のマネジメントの方からもっとも喜ばれる変化です。


1チームでの成功は盛大にお祝いしましょう。ただし、ここで勝利宣言をしてはダメです。まだまだ先は長いのです。


3. 複数チームに展開していく

最初のパイロットプロジェクトに参加したメンバーが次は指導役となって複数チームに展開していきます。

関係するメンバーの数が増え、多くの部署やステークホルダーが関わってくることによって、最初1チームだったときには経験しなかったような課題が出てくるでしょう。これを打開する推進力となるのが社内コミュニティです。最初のパイロットプロジェクトに関わったメンバーを中心にアジャイル導入に対して熱い思いを持つメンバーを集めてリーディングコミュニティ(多くの組織では推進タスクフォースとも呼ばれることが多いです)をつくりましょう。


トップはこのリーディングコミュニティをサポートします。ここでトップの口からよく出てくるのが「困ったことがあったら何でも言って来い」という発言です。一見心強いようですが、このような待ちの姿勢ではダメです。誰も何を言ってこないでしょう。上の図の中の「サポート」はもっと能動的なものです。現場で何が起こっているのかアンテナを張り巡らしましょう。


4. チェンジリーダーを発掘する

チェンジ・リーダーとは、変化を機会としてとらえる者のことである。変化を求め、機会とすべき変化を識別し、それらの変化を意味あるものとする者である。

これは『チェンジリーダーの条件』の中のピーター・ドラッカーの言葉です。

アジャイル組織変革にはさまざまな困難が伴います。ときには活動が停滞したり、後戻りしたりしてしまうこともあるでしょう。そんなときに変化の先頭に立つチェンジリーダーが求められます。

私の経験上、変化が継続する組織には必ずチェンジリーダーと呼べる人がいました。チェンジリーダーは普段は静かでも、熱い気持ちを持ち、必要とあらばトップに代わってビジョンを示し、メンバーを鼓舞する人です。緻密に計算していても行動するときは大胆です。人一倍の危機意識を持ちつつも楽観主義者で周囲を勇気づけます。


では、どのようにすればチェンジリーダーを育てられるようでしょうか?


このような人は意図して育てるのは難しいかもしれません。ここではあえて育てると言わずに「発掘」という言葉を使っています。「アジャイル」との出会いによって内面が大きく変化する人がいます。人の変化を注意深く観察しましょう。


5. 成果を外部に発信する

変化が進んできたらアジャイル導入の成果(うまくいったことだけではなく、失敗したことも成果です)を社外に向けて発信してください。アジャイル関連のコミュニティイベントや勉強会はとても盛況です。

この外部発信でもチェンジリーダーが活躍します。チェンジリーダーはアジャイル変革を進める組織における「顔」でもあります。

外部に発信することで社外からの評価や反響を得ることができます。あなたの会社のファンをつくりましょう。


6. 全社に展開していく

成果を外部に発信することで、社内で変化に対して後ろ向きだった人たちの考えも変わりはじめます。どんなに後ろ向きな人でもお客さまから「御社の◯◯(チェンジリーダーの名前)さんがニュース記事に出てましたね。御社の取り組み素晴らしいですね」と言われて嫌な気持ちになる人は少ないかと思います。

こうなったらもう変革は最終盤です。このような外部からのレピュテーションが触媒となってますます変化が進んでいくでしょう。


7. 制度やルールづくりを行う

ここでようやく社内の制度やルールづくりという話が出てきます。暗黙知だったことを形式知化していきます。

ここで注意すべきは、いかなる制度やルールも変化を前提にすべきです。


8. マインド・文化を定着させる

目に見える成果はアジャイルなプロセス、成功したプロダクト、ハイパフォーマンスなチーム、形式知としての制度やルールといったものでしょう。これらは木でいうと地上に出ている幹や枝葉に相当する部分です。しかし、忘れてはいけないのは木には地上に出ている部分同じくらいかそれ以上に根を地下に張っています。その根っこに相当する部分が人のマインドや組織の文化です。仮に冬が来て葉がすべて散ってしまったとしても春になれば青々とした若葉が芽吹いてくることでしょう。


ここまで来れば「アジャイル」が完全に自分たちのものになり、独自のマインドや文化が大きく根を張っていることでしょう。


アジャイルジャーニーに伴走する

ここまで述べてきた変化ですが、どれくらいの時間が必要なのか?という質問をよくお受けします。

反対にこちらからお客さまの想定期間を質問すると回答の平均は6ヶ月です。


ここまでも述べてきたようにアジャイル組織変革は単に部署をつくったり、人の配置を変更したり、制度を定めたり、数ヶ月スクラムをやってみたり、そんなことで容易く実現できるものではありません。


ツールや技法は何度も変化するが、大きく変化するわけではない。一方、人はゆっくりとだが、深く変化する。

エクストリームプログラミング』(ケント・ベック)


アジャイル組織変革のプロセスはその組織を構成する人、ひとり一人の行動様式や意識が深く変容していくプロセスであるとも言えます。

私の経験上、ここでは3年〜10年と幅をもって回答しておきます。


私たち Agile Studio ではこのような長期間にわたる険しいアジャイル・トランスフォーメーションの道のりを「アジャイルジャーニー」と呼んでいます。私たちはこのアジャイルジャーニーに伴走していきたいと考えています。


ご興味を持っていただいた方はぜひお問い合わせください。

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