
平鍋健児
アジャイルをスケールするフレームワーク徹底比較 - Part 1
更新日:2020年8月25日
この記事は、Arnab Gupta さんの記事 "The Ever-expanding Agile landscape as of 2020" をもとにしたものです。
Agile はその定義上、変化することが自然であるはずです。しかし、アジャイル宣言は未だ変わらずにその精神を伝えていますが、発表以降すでに20年が経とうとしているのです。ここでは、
アジャイルのコンセプトのアップデート
アジャイルをスケールさせるフレームワーク、企業フレームワーク
さらにビジネスやマネジメントやリーダーシップへの展開
など、2020年の Land Scape を紹介したいと思います(ふんだんに情報サイトへのリンクを入れていきます)。

アジャイルコンセプトのアップデート
アジャイルのコンセプトを現代的に再定義しようという試みです。
Agile Japan 2017 で日本に来た Joshua Kerievsky は Modern Agile というコンセプトで現代的にアジャイル再定義を提案、紹介しました(その時のスライド)。この時はじめて、僕はアジャイルの再定義の可能性(必要性、もしかしたら不必要性)を感じました。
遡ってみると、宣言著者の一人である Alistair Cockburnも Heart of Agile というコンセプトでよりシンプルに、アジャイルを再提示しています。Alistair は欧州を中心に精力的に講演・ワークショップ活動を行っているようです(彼の facebook/twitter 情報より)。
さらに前に、やはりアジャイル宣言著者の一人であり、日本でもファンの多い"Pragmatic Programmers"「達人プログラマ」の著者でもある Andy Hunt が GROWS を提唱していますし、
"Agile Retrospective" 邦訳「アジャイル・レトロスペクティブズ」 の著者 Diana Larsen と "The Art of Agile Development" 邦訳「アート・オブ・アジャイルデベロップメント」の James Shore が Agile Fluency Model を以前に提示していました。
最近では、Gabrielel Benefield が Mobius Loop で、より探索発見過程も含めたループを描いて日本でも研修をしています(ayumi_h さんの参加ブログ)。
アジャイルをスケールさせる
一方で、アジャイル開発をスケーラブルにするフレームワーク、大規模、エンタープライズアジャイルフレームワークも提案されています。
実用的にアジャイルをスケールさせる手法として Craig Larman と Bas Voddeが LeSSを
大企業向けにエンタープライズアジャイルフレームワークとして Dean Leffingwell が SAFe が提案し、
スクラムのオリジネーターの二人、Ken Schwaber が Nexus 、
Jeff Sutherland が Scrum@Scale を、それぞれスケールフレームワークとして提示しました。(それぞれについて詳しくは次回に)
ビジネス、マネジメント、リーダーシップ
さらに、ビジネス全体やマネジメント手法、企業内教育、そしてリーダーシップ論にも変化は及んでいます。
PM領域では PMI が2019年、Scott Ambler の DAD を統合してDisciplined Agile を再提示しています。大きなコミュニティを母体にして広まっていくかもしれません。
また、ずいぶん前(2010くらい)に、ICAgile というアジャイル認定コンソーシアムが Alistair を擁して立ち上がり、アジャイルを広く捉えて各知識・技術領域の定義とそれぞれの教育コンテンツの認定(教育機関と内容の認定)を行い始めました。今は、ICAgile Consortium となっています。
新しいマネジメントの考え方として、Regional Scrum Gathering Tokyo 2013 に来日登壇した Jurgen Appelo による Management 3.0 も日本でもよく知られるようになり、今年は日本初のカンファンレンスも開催されるようです。
Business Agility Institute ではソフトウェア開発から発展して、Agile HR, Agile Financing, Sales, Marketing など企業のビジネスオペレーション全体に渡ってのアジャイルの事例が紹介されています。
最後に、XP, Scrum に並んでアジャイル宣言の元になった英国発の手法である DSDM は、Agile Business Consortium となり活動を続けています。
今回はここまでとして、もう少し次回掘り下げたいと思います。