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  • 平鍋健児

『オブジェクト指向でなぜつくるのか』第3版

2004年に初版発行、2011年第2版、のベストセラーが第3版となって登場です。私も推薦のことばを書かせていただきました。


著者の平澤さんとは2000年前後に、日本のパターン研究会、JPLoPで出会い、ソフトウェアの設計について、あるいは、ソフトウェアでのビジネスについて、さまざまな議論を交わしてきました。実は、今のアジャイルムーブメントの先駆けとなったXP(Extreme Programming)を紹介してもらったのも、OOPSLAから帰国した平澤さんだったのです。


現在では、オブジェクト指向そのものについて話をするというトピック性も少なくなりましたし、もしかしたら、DDD(ドメイン駆動開発)と言った方が通りがよかったりするのかもしれません。でも、1990年台に大きく(産業界で)台頭したこの考え方は、現在のほとんどの開発者が自然と身につけている(つけていなければならない)考え方だと思います。もちろん、DDDを理解するにも、オブジェクト指向の中心コンセプトを理解しておくことが必須になります。


もう少し大局的に捉えると、別のコンセプト例えば関数型のプログラミング言語による設計においても、また、マイクロサービス型のアーキテクチャ設計においても、はたまた、AIのようなデータ駆動のアルゴリズムにおいても、


「対象領域をどのように捉え、それを、どのように構造に落として行くのか」


という設計活動には、なんらかの指針となる「関心事の分離」(Separation of Concerns)が必要であり、オブジェクト指向は、その1手法として成熟した、all time best であり、他の考え方で設計するにしても、参照として知っておくべきことだと思うのです。(つまり、オブジェクト指向はどのように対象を捉え、構造に定着させる技術か、ということを知ることで、他の手法にそのメタ知識を活かせるくらいに理論が議論され、実践が蓄積されてきた、ということです)


本書では、プログラミングとしてソフトウェア開発を楽にする技術だ、という視点からはじまり、そもそも現実世界をモデリングしているのではなく、関心領域を捨象しているのだ、という視点、そして、汎用整理技術としての視点、例えばUMLによる可視化技術としての視点、アジャイル開発の基礎技術としての視点、関数型言語とのハイブリッド相性の視点をカバーしています。


これらの歴史的背景も踏まえたそもそも領域と、現代の文脈での周辺新興領域を結ぶ、最高の入門書になっています。


長年のベストセラーですので、ぜひ、安心して手に取ってください。


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